アメリカで何度も読み返した本 その2 封神演義 安能務訳

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文学の観点から日本と中国を比べてみると本当に対照的です。

日本という国はクソ小さいくせに、太古の昔からとにかく文学的遺産という面から見ると豊穣のひとことですね。

それに比べて、中国では書物というと基本歴史書と詩。基本、中国というのは非常に文盲率の高い国でしたし、王朝が変わるたびに基本全王朝関係皆殺しでやってきたかなり薄ら寒い歴史もあります。

まあ、女子供が競って芸事をしていた江戸時代がある日本に比べると、女子供が人間扱いされるようになったのは基本中国共産党以降の話ですから。(もちろん中国共産党が、どれくらいHuman Rightを尊重しているか否かは全く別の話です。)

そんな中国ですから、今に残る歴史書と詩以外の文学遺産と言うのは限られています。両手の指でかぞえられるぐらい。

三国志演義

水滸伝

西遊記

金瓶梅(これは、エロですね、私結構レデイースコミック版嫌いじゃないです。ドロドロでもう凄くエロいけど。)

紅楼夢

日本人が普通思い浮かべるのはこのぐらいでしょうか。

が、実はこれ以外に庶民に最も親しまれている作品があります。

それが封神演義。

基本中国太古の王朝、殷がほろびて周が成立していく頃の歴史的な流れに、仙人界を真っ二つに分ける戦いを重ねた話です。

が、とにかくこの仙人たちのコロシアイがもうたまらない。

こう、いかにも中国風エキゾチックという感じの名がついた、特殊兵器やら、布陣が同情しますが。

伝奇小説の戦いや兵器のパターン網羅

といったかんじです。私が持っているのはこれ

講談社文庫、各500頁ぐらいで全三巻。かなりの読みでです。

あ、でも日本だと漫画とアニメのせいで、原作は読んでいなくても’封神演義’という作品名になじみあるひとおおいわけですよね。

じつは、アニメの方はキャラデザインが物すご~く可愛いので、最初にDVDが出たあと、アメリカのOtakon(Baltimoreで年一介、1999年から2016年まで開かれた、アメリカ東海岸最大の、ファン主催の主に日本のアニメを中心としたとPop Culture の祭典。)でしっかり買いました。

Opening も好きでしたよ。何より四不象(スープーシャン)が可愛くて、ぬいぐるみも持ってました。あと、巨大にゃんこになってしまった黒点虎も可愛かったし、ピエロ見たいな申公豹も気に入ってました。

でも。

お話は完全に原作のほうが面白いです。

文庫版全訳の冒頭に、この物語がいかに中国の普通の人々に親しまれていたかを解説する部分があります。文盲でも、このお話は人形劇やら劇場ですごく人気だったみたいです。あと、道場人物の中には、中国のまあ道教の神様になっちゃった人も結構います。

主人公は、日本では本来太公望の名で有名になった天才軍師、姜子牙です。

私はぶっちゃけて言えば、中国史版、歴女ぽいところがあるので、いかにも中国という設定で話しがどんどん広がり、かつ時々故事成語のもとになったいわゆる史実とされるものも挟まったりして凄く楽しい。

ヤングジャンプ連載の漫画の方は読んでません。アニメは漫画をだいぶはしおったそうですね。さらに、ごく最近になって’覇弓封神演義’として再度アニメ化していました。

とにかくこの本読まないと損です。私はなんといっても中国風オカルトの布陣系の話がとにかくツボにはまってしまった。

中国にもこんな豊かなファンタジーがあったのに、なんか歴史物にいつも晴れ舞台を奪われている感じ。この本の訳者によると、その最大の理由は儒教学者がこの本を嫌ったということです。面白いですよ、もう前書きの解題からして充実してますから。

そういえば、昔々大学院に行っていた頃、何人か中共から来た知人がいましたが、彼らは本当に中国の古典の知識がないのでびっくりしました。厳密に言うと名前を知っていても実際に読んだことがなかったりするわけです。

正直、高校時代は古文も、漢文も苦手だったのに、おとなになってからせっせと中国系のものを読み出したので、ずいぶんの団塊よりもう少し上のおじさんと話をするときに喜ばれました。(ちなみに、団塊の世代と違い、いじめられることもセクハラをうけることもなかったですね。この世代からは。あの世代は素人と玄人をはっきり分ける教育を受けていたので、素人に分類されている限り、非常に楽でした。)

というわけで、私も自称中国歴女としての愛読書がいくつかあります。その話は次回に。