個人的に、BL漫画の漱石、鴎外は日高ショーコとヨネダコウだと思ってます。つまり他を大きく離す2大巨星。
この二人の漫画を、ただBL漫画というだけで読みもしないのなら、貴方には漫画読みの資格はない。
別に、’ワンピース’が面白い漫画のゴールデンスタンダードになっているリーマンに向けてケチつけているわけではありません。
男だけど、少女漫画の名作とか好きだよという貴方、この二人の作品は読まないと、もう漫画ファン名乗る資格はないと言い切ります。
恋愛漫画の主流はもうずいぶん前にBL漫画に移ってきてますから。
最近の少女漫画って、TL化してるか、一応恋愛の要素はあるものの本当の読みどころはそれ以外に移ってしまってますから。なんつうかパワーアップした少女たちの自己実現物語ぽいのです。
さらに、少年誌にも少女が主人公で、絵柄もどちらかと言うと少女漫画系かなと言う作品すら増えているし。
ともかくヨネダコウには、特に有名な作品が2つあります。
ひとつは、多分ヤクザ世界ベースのBL漫画としてもうこれ以上のものは出ないと思われる、
‘囀る鳥ははばたかない’
そしてもうひとつが、実写映画化された’どうしても触れたくない’
あ、こちらは映画版
どちらも読んでますが、’囀る鳥ははばたかない’’の話は後でゆっくり書きます。’憂鬱な朝’と並ぶ今現在BL漫画としての最高到達点ですから。(ということは多分ここ20年の恋愛漫画の最高到達点ということ。)
さて、私は基本’どうしても触れたくない’全くだめでした。さらにだめおしするように、映画版を見る機会がありますますだめになりました。とにかく外川という年上攻めにまるっきり萌えない。加えて特に映画を見たあとは嶋くんすらだめ。
ですが、今回の’それでもやさしい恋をする’は、この作品のスピンオフです。
主人公出口が三年越しの恋を実らせるまでの、その思慕の相手は年下メガネの小野寺。しっかり、小野寺くんが嶋くんをちょっと好きになるという状況すら登場します。
私はこの作品を先に読んで、確かその後で’どうしても触れたくない’を試読して、結果的にRentaで無期限レンタルしなかったのですから。
出口という男は、童顔イケメンでモテる。ゲイにも女にもモテるようなタイプ。程よくチャラく程よく優しく、なにげにかっこよいやつ。
こういう男が、老けて見えるノンケ、年下、地味、メガネ、おまけに鈍感な小野寺にほぼ一発で恋に落ちてしまうのですから
とにかく切ない。
実は出口、漫画で描かれるビジュアルは、’囀る鳥ははばたかない’主人公の美形やくざ矢代に通じているのです。
ヤクザとリーマンでは、世界の荒廃度が違いますが、この二人はキャラとしてもかぶる。(このへんから、ヨネダコウさんのほうが、漱石型かも。漱石もアーキタイプが目立つので。鴎外はアーキタイプ私が読んだ限りでは使わない。)
ふたりとも、
韜晦のかたまり。
これ、結構知らない人多い言葉かも。とうかいとよみます。
昔々、昭和の時代に知り合いになったゲイで東大でのイラストレーター件新人作家だった人に教えてもらった感じです。
コトバンクで見ると、
[名](スル)
1 自分の本心や才能・地位などをつつみ隠すこと。
「何故貴女は自分をそれ程まで―して居られるのか」〈有島・或る女〉
2 身を隠すこと。姿をくらますこと。
「章三郎は一と月ばかり―していたが」〈谷崎・異端者の悲しみ〉
ほらぴったりでしょう。
で、そこまでするのはもちろん、いちに死ぬほど結構プライドが高い。プライド高すぎるからこそ、逆にタカビーには振る舞わず、チャラく笑ってごまかすパターン。
自己欺瞞よりずーっと悲しくて切ない。
本心がバレたら、さらに本性がばれたら
とりかえしがつかない
自分の感情を隠し、ごまかし、嘘までつく出口が本当に切ない。
ただし、全く終りが見えない大長編’囀る鳥ははばたかない’とことなり、この恋はかなり優しげなハッピーエンドとして終結します。
さらに、エロはかなり量的に限られている。
そしてその分、とにかく感情の描きこみが深い。
つくづく、本物の恋愛フィクションを読みたいのなら、今やBL漫画が一番と再確認できる作品ですね。
お話も、キャラも、ストーリーの展開の仕方もまったくちがうのですが、日高さんのリーマン恋愛作品’嵐の後’とものすごく読後感が似ているのです。
たぶん、リアルでは辛いだけの恋が、フィクションの中で成就するとこの、あの独特のカタルシス。
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