お話は、明治時代の華族世界という設定。久世子爵家の若き後継ぎである昭彦と、この家の家令である桂木との関係が、まだ確固とした身分意識、世襲問題などを絡めながら進んでいきます。
’憂鬱な朝’の単行本第一巻が刊行されたのが2009年の春。
だいたい、後で読んだBLマニアの隠遁女子にしてすでに大小説家である、三浦しおんさんのおすすめBL漫画リストにも乗ってましたから。
さて、私が電子漫画サイト、Rentaで’憂鬱な朝’を読み始めたのは、2015年の2月、まだ日本に定期的な帰国を始める前でした。
あの時、電子化されていたのは4巻まで。そのあと日本の家族の事情が変わり同じ年の3月中旬に帰国、その時に第五巻を、単行本で買い、6,7と刊行されるたびに買ってますが、第八巻もうすぐでしょう。
ネタバレにあまりならないように、今日も頑張りましょう。
日高さんの絵は、かなり地味です。線そのものはかためで、いわゆる線そのものに色気があるタイプではありません。あと、濡れ場がスゴイというわけでもない。
でも、
構成力が凄まじいのです。
一番最初にそれを感じたのが、第四巻後半、市井の民家で’庶民の生活’じみたものを始めた昭彦のもとを、桂木が訪れるところです。
二人はまあ気まずいまま、正座して座っているのですが そこでまず昭彦が手を伸ばして、桂木の手に触れるのです。
この時点に至るまで桂木は、表向き主人である昭彦の無理に従うような建前で肉体関係葉受け入れていたものの、自分自身に対しても、昭彦に対しても、自分の気持ちをあらわにはしていませんでした。
あ、考えてみればここですでに、第四巻ですから、ずいぶん話を引っ張ってきている。
そもそも初めて読んだときは、まずは話の面白さ(とにかく、時代背景とかよく書き込まれているので読みごたえがある。)そしてかなり多めの登場人物の関係、さらにそれゆえの絡み合うプロットと、いわゆるBL要素以外で何しろ読み応えのある漫画なのでそういう読み方をしてしまっていたのです。
が、このページをきっかけに、桂木の心情が、実は秘められていたからこそかなり熱くなってしまっていた昭彦への気持ちが引き出されていきます。
そして、その過程を表現するのも、桂木の手と昭彦の手の絡み合うシーンを挟みながら進んでいくのです。
これ、確かに表現力もすごいのだけど、最終的に構成力の凄さでしょう。
あ、もうこれ以上漫画のシーン挟みませんから。
買って読みましょう。
このシーンに引き込まれ、まず思い出したのが、マーチンスコセージが、Edith Wharton原作の”The Age of innocence’を映画化した作品のある1シーン。
お話は、まるでルールのためのルールという感じの事細かな社交プロトコルのもとに展開される英国ビクトリア朝の上流階級が舞台です。(設定として通ずるものがありませでしょう。)
メインプロットは三角関係。まあ、押し殺されてすさまじい情念のお話であり、それがビクトリア朝の息苦しいほど過剰に飾り立てられた室内で進行していくのです。
問題のシーンは馬車の中、Daniel Day-LewisとMichelle Pfeifferが最初に思いをたしかめあうのですが、そこで何をするかというと、
男は女の手袋をゆっくりと脱がしていくのですね。
キスシーンより、なにより、このシーンのエロティシズムが凄かったのです。
それにしても’憂鬱な朝’こそ実写映画化してほしい。やはり日本人のキャストでやってほしい。
だって、三島由紀夫の小説とか、万々過去に映画化されたでしょう。それを思えばできないことないと思うけど。ただ、新人を主人公二人にしないと無理だろうは、思いますが。
ちなみに、三島由紀夫って、戯曲を除くと、少女漫画の大河ロマン感が強いです。だから読みやすかったので文庫で手に入るものはほぼ読んでいる作家のひとりですね。
(もう一人文庫でほぼ全部読んだのが夏目漱石。こちらは小説です。内容ではなく、文章そのものがそこはかとなくエロい作品がいくつもあって、やはり文庫で買える分全部。といいたいところだけど、虞美人草だけは、擬古文がだめでいまだに読み終えていない。あらすじは有名すぎてしっているのでそれが気に食わないせいもあるのかもしれない。)
ところで嘆かわしいことに、今の若いBL漫画読者にとって、どうもこの漫画難しすぎるのだそうです。大きなお話というものが読めなくなっているのだろうか。
単行本の第一巻が刊行されて以来もうすぐ10年ですから、ちょっと寂しい。
まあ、相変わらず私のUser数はぼちぼちペースでしか伸びてはいませんが、Google Analiticsで、一つだけ異常な数値が出ていたので、開き直ることにしました。
私、PCで読んでいる人が、なんとほぼ75%なのです。
だって、私の文章って漢字多いし、読みやすさを心掛けているつもりではあっても、たぶんそう簡単に読み流すのは無理だと思うから。
でも、この数字を見て、なんか逆にうれしくなりました。私のblogを読んでいる人たちは、本当に読むこが好きな人たちが多いのですね。
で、このブログは腐女子向けが過半数を占めるので、つまり腐女子は一般人民より、しっかり読むのが好きってことよね。
腐女子最高。