‘七人のイブ’ ニール スティーヴンスン著 を読みながら、科学と民主主義は似ていると感じたこと
これよく考えると、ものすごくきつく暗い内容なはずなのです。さらにいわゆるアクションがいっぱいという物語でもない。
でも、読んで何故かすごく元気がでました。
正直コロナが始まって以来続いていた、何とも言えない抑うつ状態がかなり取れてしまった感じです。
本はこちら、
あ、私、この人の本よく考えたら日本語訳で読んだの初めてです。で、正直読みながら、あれこれ結構英語で読んでも良かったかななんて感じてました。
それと、実は今読み終わったのは、一部と二部だけで、3部は今やっと読み始めたところです。
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この物語は、ごくごく近未来の地球。まず
月が七つに突然分裂します
で、そこですぐ地球が滅亡するのではなく、まあかなりきちんとSimulationして、その説明をしまくってくれて、大体2年ぐらいでこの7つのピースが最終的にほぼ粉々になり、それが隕石雨として地球に降り注ぐことで、破滅することになるわけです。
で、月が7つに分裂した時点で、もともとはPrivateのオーナーがいる商業用小型宇宙ステーションで業務についていた乗務員がメインキャラになります。
さらに、ほとんど独創的な小設定なのですが、この宇宙ステーションがたまたま非常に小さな隕石をとらえてそれに、丁度根を下ろすような形で据え付けれれているのです。これが、その後延々とExtrapolationが続く鍵になるのですね。
もちろん、この隕石は鉱山としての価値を見込んでのことなのでメインヒロインの一人は、ロボットエンジニアであり、さらに鉱業エンジニアリングのBackgroundを持つ女性科学者。
ここにさらにこの女性が、鉱業エンジニア一家出身で趣味がほとんどアンチックのような無線通信が趣味で父親とたまにモールスコードだけで地球と直に交信するというクレバーな設定がある。
まあ、ぶっちゃけ活劇こそないけど、しかも地球は破滅すると分かっていいるけど、全体として非常に吸引力のあるストーリーテリングなのです。
まあ、正直、軌道修正の話とかをとにかくぎちぎちに説明するので時々そういう部分は読んでいて疲れますがね。
それでも、本当に読んでよかった。
で、一言の感想というのが、’科学と民主主義’はつくづく似ているなあと。
科学の定義で実は感動的なまでに気に入ったのは、漫画Dr. Stoneの千空のネーム、
“科学でもわからないことがある、じゃーねえ。わからねえことにルールを探す、そのくっそ地道な努力を、科学って呼んでいるだけだ。”
まあ、さらに特に応用科学の場合、確率でしか予想を記述できないというところが、基本ですし。
まあ、だからこそ、自分は基本科学者であるとCommitすることは、何らかのタイミングで結果がアウトライヤーに落ちたら、それはその時、またFeedback Loopに戻して次のルールを探すしかないというコトですね。
基本に科学が指し示す解とは、今あるデータを基にした限りで、最も確率的に高いであろう導きされた予想でしかない。
科学的態度というのは、これを忘れずに、なおかついまだしている予想にCommitできるというコトです。
だから、いろいろな性格の偏りや、おかしな志向があっても、科学者は自分のコミットした買いに対しては、こういう大人の態度が取れるというコトです。
で、この物語はそういう科学者が、最終的にはぎりぎりで人類を未来へつなげるという物語なんです。
いや、静止衛星軌道上にあっても、どんどん質量も、モメンタムも変るからまあ、その糞細かい説明を読まされますので疲れましたが。
さて、アメリカは、Biden 政権がスタートして、まだ一週間をちょっとすぎたばかり。でも、アメリカはどうしようもなくひどい状況にあるのだけど、新政権の人たちは、とにかく淡々とどんどん仕事をこなしていく。
しばらく、ひどい状態が続くという実感が迫ってきて先週はすごくつらかったのですが、ここにきて、淡々とやるしきゃないのだろうなあと思い出したところにこの作品を読んだのですから。
アメリカでは、この作品はベストセラーになりました。普段あまりSFを読まない層がかなり読んだことでも知られ、映画化が検討されているようです。一部と二部をひとまとめにして、一つの映画3時間弱ぐらいの長さにまとめてほしい。
なんといっても、軌道計算の話がかなりVisualに表現される分、結構コンパクトになるだろうし。
私たちは、たぶんそろそろ大人にならなくてはいけない。
科学も民主主義も絶対ではないどころか、そうそう最適解を導くとも限らない。でも、この二つが私たちが持っている一番ましな道具であること。
そして、絶対解が現実に存在するなどと思うことは、ただの妄想でしかないとわきまえ、やるべきことを、やり続けることなのだと思う。ほら、種としてみたら、人間の存在目的なんて種の存続ぐらいなものなので。まあ、この作品の2部の落とし前のつけ方とか、良く考えると本当にもう身もふたもないですから。
ともあれ、お勧めです。
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