‘コンビニ人間’村田沙耶香著は怖いSF、GAFA支配とはまた別の、日本的ディスピアの理想的労働者’古倉恵子’という未来
今日はJuly 4th, アメリカでは独立記念日の祝日です。
今朝は、7時半頃起きてそのまま先日キンドルにいれた Kindle Unlimitedから選んだこの一冊を読んでました。(後半ネタバレありです。)
これ、日本人以外にっては、ちょとしたSF感が強い。日本以外に、日本のような’コンビニ’はありません。発表されたのが2016年、そして英語翻訳(US&UK)が2018年です。私は日本人だし、日本語で読んだけど、アメリカぐらしが長いので余計SFと感じてしまうのかも知れません。
で、この本の文学的意味よりも、’日本のコンビニ’が示唆する、あってほしくはないけど、このまま行くと有り得そうな未来について考えさせられてしまうのです。
作者である村田沙耶香さんは、この小説を買いた当時、実際に週3日コンビニで働いていたそうです。ですからコンビニが、一体どうやって機能しているか手際よく、でも微にいり細にいり説明されています。
私が、一番最初に愕然としたのは、こんな事細かな手順を踏まなくてはならない労働が、
アルバイトで遂行されている。
ということ。一度マニュアル見てみたいと思いましたよ。これはアメリカを代表とするマニュアルベースの労働内容と、
あまりにレベルが違う。
こんなこと、日本以外のファストビジネスの労働者にはちょっと無理でしょう。
で、コンビニをその頂点として、日本のファストビジネスの労働者の大多数は、日本以外の同種の労働者とは別種の極めて疲弊しやすい労働環境にさらされているわけです。
コンビニの売り方そのものが、この小説で説明されているように、実は純粋な利便さの追求ではなく、日本人の身の丈にあった、
疑似 ’プチ幸福’を売っている。
実はこれ、日本人が考えるおもてなしをそのまま商品化し、マス展開したようなものでしょう。
24-7という業務形態からして、感情受容感抜群でしょう。しかも売っているものは基本日常に起きうる普通の欠落をそこそこでも即刻埋めてくれるものばかりです。
そして、結構な時間をかけて、コンビニ店員の接客もこのビジネスモデルに合わせて、最適化されてきた。
いや、こんなところで働くの怖いでしょう。
正直、日本に戻ってすぐ時差ボケで夜中に目が覚めてしまうとき、開いてるコンビニほどありがたいものはないのですが、ほとんどがアルバイトだなんてひどい。
少し前から、Youtubeなどにいわゆる’底辺の職場’での馬鹿騒ぎがあげられて、それが炎上していわば社会問題になるということが頻繁に起きてます。
確かに、消費者側としては、食品衛生問題などを始めとして溜まったもんじゃないです。
でも、働いている側からすると、正気を保つために、
ギリギリの行為ではないでしょうか。
つまり、それほど非人間的な職場がいつの間にか、日本には蔓延してしまったということです。
非人間的な労働環境というと、ギグ・エコノミーや、アマゾンやWalmartに代表とされる極端に効率化が進められ、人間を非人間てきな機械の部品のように扱うイメージが強いし、実際問題として今世界で起こっていることはそれです。
でも、日本という国のブラックな労働環境はそれとはまた少し違う。
基本、日本と行く国は、いわゆるエリートのレベルが欧米諸国(いやそれ以外の国に比べても)とても低く、反面低学歴層の基本能力が世界一高い国でしす。なんだかんだ言っても、毎日を支えてくれる、学歴だけは必要とされないいわゆるマニュアルのある労働を、実は
マニュアル以上に居心地の良いものにしている。
それが日本と言う国に暮らす時に感じる心地よさの背景でしょう。
でも、これを支える側の低賃金、高価値の労働者の疲弊をどうするのでしょう。
だから、この物語の主人公、コンビニ店員という’理想の労働者像’に完全適合した万年コンビニアルバイトの古倉恵子は、日本的ディストピアのExtrapolationだと感じるわけです。まあ、この作品では曖昧ですが、この後作者はもっとはっきりとしたSF的設定に基づいた物語に移行しているようですが。
正直、この小説の中で恵子がある種のソシオパス、あるいはアスペルガー症候群であることを、わざわざネタバラシポク匂わせる部分はあまり面白くない。
でも、似て非なる社会的落伍者であり、ある種他の国ならよくある無能力者白羽を対比させることによって、古倉景子という’理想形’が際立つのです。
彼女は、コンビニ店員として働いていることに満足している。
できたら、週2日の休日もコンビニで働きたいと思っている。
基本一日3食、コンビニ食で基本済ませている。
コンビニで働く以外の生活に興味がない。
この先ネタバレになります。*********************
周りのプレッシャー応えるために、彼女は完璧な社会落伍者である、白羽を自分のアパートに引き取り、疑似同棲生活を始めるのですが、その歳彼女が供給する食事がものすごい。
白米に、茹でた野菜や他の安い食材。味付けは醤油で適当に。
まさに、彼女は食事とは言わず、’餌’をだすと明言します。
そして当初困惑した白羽根は、実際にこの’食べることができ、マアマアの栄養があるもの’でも食事とは呼べないものを見え、
’餌であることを理解します’
これはかなりのSF的過剰適合でしょう。例えばスピルバーグによって映画化された’Ready Player One’という、SFがありますが、これに登場する究極的に搾取される側の生活レベルでしょう。
その後、白羽にいったんは長年勤めたコンビニをやめさせられますが、その結果彼女は生きることそのものに対する意欲さえ失ってします。
恵子は、コンビニの音と光を目にするといつも気分な高揚し、完璧なアルバイトとして働くのですが、
光と音に対して、よりIntimateな残りの5感、嗅覚、触覚、味覚に対しては、ひどく鈍感であったり、逆に敏感すぎて遮断する存在です。
よりIntimateな感覚を避けるということは、他の人間と関わることを避けることです。
当然、結婚どころか性行為などは論外でしょう。
とすると、子供も作らず、嬉々として週7日働きたがり、長時間のしかも細かな対応を強いられる労働に勤しむ、理想の働き手、
それがコンビニ人間です。
付け足しですが、AmazonというBusiness Modelには、’日本的コンビニ’の置き換えはできないと思います。でも、コンビニバイトが、’コンビニ人間’になるしかない未来は、かなりすぐそこまで来ているのではないかと思います。
全国のコンビニバイトさんたち、あなた達のやっていることは高価値労働です。正社員化と仕事外で生活が営めるだけの待遇を要求しましょう。
それができなければ、日本はさっさとBasicIncome導入しましょう。というか結婚して子供を育てる人たちの完全サポートこれしかないでしょう。
何度も言いますが、日本の強みのひとつは低学歴層の世界一の質の高さです。この層をこのまま疲弊させていったら、確かに私も日本がオワコンになってしまうと思います。
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