デューン/砂の惑星、新たな映画化の予告編を見て、原作の凄味、そして1984年のデビッドリンチの映画化の正しさを思い返しました。

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私は、デューン/砂の惑星、原作全6巻読んでいます。(これ、英語版だと6作ですが、翻訳だと、18巻ぐらいになるはずです。しかも、一冊が結構厚めで。)

デューン/砂の惑星

デューン/砂漠の救世主

デューン/砂丘の子供たち

デューン/砂漠の神皇帝

デューン/砂漠の異端者

デューン/砂丘の大聖堂

ただ、かなり変な読み方してます。まず最初に、私映画としての欠点なんてなんのその、

1984年のDavid Lynchの映画化が大好きです。

で、そもそも映画を先に見て、原作一作目、Duneを手に取ったのです。

一番最初にこの映画を見たのは、アメリカに来てすぐの1985年、友人の家のVHSで見せてもらいました。もちろん字幕なしでしたので、正直お話すべてが理解できたとは言い難い。

でも私はなによりも、あの

異世界感に魅せられたのです。

で、筋がいまいちわからなかったこともあり、すぐ原作を手に取りました。つまり、まだアメリカに来て一年もたっていないのに、この作品を原書で読み始めました。

いまでこそ、英語を読むのはほとんど苦になりませんが、あの時はかなり苦労したのを覚えています。大体、アメリカのペーパーバックスって、フォントは小さいし紙は悪いしで、物理的にも読みずらい。しかも日本の文庫本よりサイズだけ大きいし。

そして、渡米後はじめて、日本に里帰りしたときに、2巻から5巻まで日本語で買い込みました。で、この時気づいたのですが、翻訳だと、一巻が文庫だと3巻分になります。だから全12巻抱えてアメリカにもどりました。

あ、この時点で、6巻’砂丘の大聖堂’は翻訳がでておらず、(そもそも原書がはっぴょうされたのが、1985年です。)最終的に、また原書で読みました。さすがに1巻を読んだときに比べて、何よりいろいろな特殊用語や、人名、そしていろいろなハウスの名前が頭に入っていたので、かなり私にとっては読みやすくなっていました。

6巻を読み終わった時の感想なのですが、何故か三島由紀夫の4部作、’豊饒の海’’の第四部’天人五衰’の最後を思い出しました。

まあ、輪が閉じて元に戻ってしまった感じなんです。

で、この両作品とも、読了後直後はすっぽかされたような感じで、その後じわじわと、重量感が増してくるんですよね。

というわけで、もしあなたが、’豊饒の海’も、’デューン/砂の惑星’’シリーズも読んでいないのでしたら、超お勧めです。まあ、両方とも最初の50-100ページぐらいは我慢がいるでしょうが、いったんはまると本当にはまることのできる本ですから。

さて、こんな話を始めた理由はもちろん今度またDuneが映画化されたからです。で、私も予告編を違ったバージョンでいくつか見ました。で、私の感想はというと、

お金かかってる!!、Sand Warmかっけー

なんか、こんな感じしかないです。でもこれだったら、リドリー・スコットの、’Kingdom of Heaven’のほうが、異世界スペクタクル感あるでしょう。そう思いました。(この映画の、キリスト教国と、イスラム教国の描き方は素敵でした。)

まあ、新作だし、大作だから、いろいろと持ち上げているのはいいのですが、持ち上げるに事欠いて、1984年の作品に比べてずっと優れている適な内容が多いこと、これがすごくカチンときました。

その第一に挙げているのが、主人公のキャストがより原作に忠実だというもの。これすごくへんですよ。単に1984年のKyle MacLachlaneのほうが背が高いだけでしょう。

今度の映画化の主演は、Timothée Hal Chalamet、1995年生まれ、たいしてKyleのほうは1959年生まれですが、Duneは1984年の制作です。だから、24と25の違いだけで、基本ハリウッドによくある20代の役者が設定10代を演じるパターン。

あと、もうひとつの売りは、今回のDuneは前後編に分かれるそうです。原作が巨大すぎるので。

うーん、これってたぶん関係ないと思う、とくに後半って砂漠の民フレーメンの話が多くて、そこって結構スケール感がなくて、Dune全体のバランスからするとかなり端追っても絵としての問題はないと思うし。

そもそも、Duneは2000年に、アメリカのSFチャンネルで、TV映画化されています。その時は、2部どころか、基本3部に分けていました。結果は、

なんか冗長な感じにしかならなかった

まあ、あの映像化はなによりも、主役であるPaul Atreidesが完全にミスキャストだったから。だって、Paulは、あくまで大人に近づきつつある美少年ですから。

さて、2021年版で逆に、一番がっかりしたのは、1984年では、あのイタリアの往年の大女優Silvana Manganoが演じたDuneシリーズの大勢力のひとつべネゲセリットの教母ですね。今回はシャーロットランプリングがやっているけど、なんか凄味にかける。

1984年版のべネゲセリットって、頭も眉も剃っててこう、異能者感がはんぱなかったですからね。

さらに、たぶん1984年版の異世界感を一番強めたあのハルコンネン男爵にいたっては、なんだかBatman映画に出てきた悪役かぐらいで、たいしてきもくない。

1984年のDuneって考えてみるとずいぶん悪いタイミングでリリースされたと思います。だって、スターワーズのオリジナル三部作が完了したすぐ後で、レーガン政権で、アメリカが根拠のない楽観主義に包まれていたころですもの。

まあ、だからこそへそ曲がりで、フリーク趣味の私が完全にはまったのですよね。

結局、Duneシリーズが、よくあるファンタジーサーガと徹底的に違うのは、勧善懲悪や、予定調和とは無縁のドロドロの権力闘争がスぺオペレベルで展開されるからです。

さらに、それとエコロジーそしてBiotech的な、これも原作が発表された時代を考えるとかなり先取りしている、SF的要素やExtrapolationがなんだかんだとつまっているから。

そして今振り返ると、砂漠という、西欧にとってすぐ隣にありながらごく最近まであまりに異世界感の強かった、、中近東的世界が投影された砂の惑星アラキスを舞台としたことが、奇しくもフィクションというものの不思議さを思い返させてくれるのです。

というわけで、もしあなたが最近ラノベに飽きてきたのでしたら、まずは1984年の映画を見てみてください。そしてそこでDuneの世界に興味をもてたら、原作読んでみましょう。

いやー私自身、とうとうラノベに飽きてきました。漫画の原作として消費しているうちは良かったのですが、なんだかどんどん読書力が弱ってきているのですよね。

というわけで、いままで10回ぐらい読みかけては投げ出したSF(といってもSpeculative Fictionと呼ぶほうに近い)にもう一度チャレンジすることにした。

ニール・スティーヴンスンのAnathem

この人の、90年代の作品は訳されていて、私も読んでます。Zodiac、翻訳もされている’Snow Crash’と’Diamond Age’. 私は、まだ幼児だった娘にiPadを与えたときに完全にこの作品のことを考えてました。

その後、Criptonomiconを買って、今一好きになれずに投げてしまった。そして、その後で買ったのがこのAnathem, あ、この作品翻訳されてません。というかこの人の作品はなかなか翻訳者が見つからないのかも。

ただ、Anathemはどうにかして読んでみたい。これ一種の数学者が主人公なんです。ただ、どうして死ぬほど読みにくいかというと、

とにかく造語、新概念が多すぎる

Duneにはまるのが50-100ページだとするなら、さっきアメリカのアマゾンのReviewを読んだら、星5つつけている人がはっきりと星の少ないレビューは絶対途中で投げ出していると指摘してました。で、少なくとも最初の数百ページは我慢のコで読むしかないのです。でも、最後まで読んだ人は絶賛なのよね。

ともあれ、この人の作品に興味があるのでしたら、ダイヤモンドエイジが一番おすすめかな。あと、私そういえばこちらを先に読もうと思ったのが、このひと最新長編は翻訳されているので、肩慣らしにこっちから読みます。

ニール・スティーヴンスン