そういえば、日本に来てすぐたまたま目についたので、この本を読んだ。
酒井順子さんといえば、負け犬の遠吠えで、女性ライターとしての地位を確立されたからですが、林真理子さんとは全く違う、東京、そして女子高育ちの
`洗練された自虐‘が売りです。
この本も、あまり過激にならず、さらにいつもの自虐をふんだんに織り込みながら、日本に非常に多い、‘男性を立てたほうが楽‘という穴にはまり込んでしまっている女性たちの人格構造を分析しています。
この方は、東京育ちということもあり、とにかくあまり尖ったことは言わない用にという自己規制がすごく強い。
その立ち位置は、私からすると本来物足りないはずなのだけど、
自虐の陰に澱む呪詛が窺える。
だから、所詮男性的システムとうまくやりながら、Feminismを唱える上野千鶴子あたりより、その毒は結構深いし、リーチも広いと思う。(ただ、上野千鶴子の老後論は面白い。)
大体、この方結婚してないし、どこか多くの日本の終身独身女性の中に潜む、ミサンドリーすら(ミサンドリーは、ミソジニーの対立後です。男と男らしさ嫌い)ほの見える。
と、そんな感想を抱きながら、今回の日本滞在で初めて、錦糸町アルカキットの、この界隈で一番大きな本屋をブラウズしていたら、
石田衣良の新作、‘爽年‘が文庫になっていた。
これは、彼の‘娼年‘三部作の完結編。
私、二作目の‘逝年‘の終わり方がすごくきれいだったので、あ、これでおしまいなのかなあと思ってました。
まとまったお話としては、いまだに第二作目が一番好き。
一作目は、このコールボーイという扱い方によっては際物にしかならない題材を、女性の性欲と性の不可知な多様性をテーマに、たぶん日本で女性も入れて初めて小説として成立させ、描いたということになる。
もちろん、女性作家による、女性の性について突き詰めた小説は結構あると思う。ただ、そういう小説は、ほとんどの場合、
私をいれて、女性が読んでもそれほど感動しない。
理由は簡単で、‘あ、これ私にはあまり関係ない‘でパスしてしまうことが結構あるから。
古い話になるけど、私は子供のころ瀬戸内晴美の‘花芯‘を読み、さらにその男性による高評価を読んで、
ものすごくトラウマになった。
私の実感とは似ても似つかないものだったので、ぶっちゃけ‘子宮感覚‘とか言われてものすごく怖くなった。正直、そんなものに振り回されるのかと思うと本当に嫌だった。
この話は突っ込むとながくなるので、またにしますが、この‘娼年‘シリーズがすごいのは、
女性の性欲が、いかに多様であるかLGBTまで視野に入れて描いている。
そう、日本の典型的な男の思い込みとは全く違った、女性は一人一人が独自な性欲のありようを抱えている。
だから、このシリーズは、女性が読んで感動するとともに、男性が素直に読んでみるのなら、ものすごい発見があるはずです。
さて、さらに石田衣良は、完結編、爽年で、この物語をなんと、
私たちの現実に投げ返してきた。
主人公まことの仕事は、特にこの完結編で、もはやSex セラピー以外の何物でもないことをはっきりと示唆している。
いつものように、何人かの客との邂逅が語られるが、そのうちの一つ‘拒食症‘の女性とのやりとりは、正直読んでいて泣きそうになり、困った。スタバで読んでいたので。
結局、主人公まことは究極のカウンセラーとして、ずば抜けて秀でていると思う。
それにしても、このシリーズのタイトルといい、酒井順子の本といい、
漢字のタイトルってときどきすごく素敵
ところで、前に一度レビューを書いたある漫画がすごく進化してて面白いのです。今回のテーマともつながるので、なるべく早く取り上げますね。