私は未だに、一応Manabuさんとイケハヤさんのブログをチェックはします。ほとんど読まないけど。一言で言って今の日本の若い人の温度を知るのにいいので。
さらに、このお二人は私が知っているブログのなかでも、とにかく’日本オワコン’という結論を強く打ち出されているので、弱小高齢ブロガーとしてつい反論したくなります。
さて、今朝またイケハヤさんのブログと、Youtubeリンクで、’悲報、日本はすでに後進国です。’と言う記事上がってました。
そしてこの記事のいわば根拠が、少し前のこちらの記事。
日本はもはや後進国であると認める勇気を持とう
この記事、たとえば色々問題があってもそれなりに提言もしてる、たとえばデビッド・アトキンソンの記事などに比べると、なんというか分析が浅いどころか、かなり的はずれなのです。
この記事の論旨は基本3つです。一つ一つつぶしていきましょう。
1.日本の生産性が低いと言う問題
これは、アトキンソンも言っているように、日本の場合まず中小企業が多すぎること、そして長い間こういう企業間のダイナミックなM&Aが行われなかったことが大きい。
ただ、それ以上にこと生産性を見る場合、生産性の分母が労働時間であることを忘れてはいけません。
日本は全体としてOutputがひどいというのではなく、
戦後以来一貫してあまりにも労働時間が長い
私は、FPとか数学とか、わりと頭脳系の世界と馴染みが多い生活を送ってきましたが、だからといって現実世界を忘れたことは一度もありません。
その理由はいたって簡単で、父がゼネコンの下請けの中小企業主として高度成長期の波に乗り成功し、その後紆余曲折あったものの今も妹の指導家のもと規模は下がったものの存続しており、私自身もいまかかわっているからです。
日本の、ゼネコンは下請けにかなり無理をさせることによって、世界で見てもつくづく
最高技術と最短工期を両立させています。
私が住んでいるBaltimoreは、ちょうどここに住みだした頃からGentrificationという名の再開発が始めったので、ほぼ常時建築中のビルを見ることができます。
で、この工事の進み具合が東京の工事現場を知っているものから見るとものすごく遅く、さらに工法も、日本から見ると
Primitiveです。
とにかく、アメリカ東海岸ということもあり、地震対策のような複雑な構造はなしで、結構高いビルをたらたらと組み上げていきますから。特に中層(10階建てまで)のビルの構造の薄さとか見ていて怖い。
アメリカでこうですから、最近日本を超えたともてはやされがちな、中国も韓国も見た目は派手だけど、内部構造に問題のあるビルが多すぎます。
ちなみに、建築工事の現場は何度もいうように、週休2日ではく、さらに工期が終わりに近づくと間に合わせるために休日出勤ですよ。妹の会社の本社は、ほぼ週休二日を達成してますが、土曜日必ず誰か一人か二人は出勤してます。
なんせ、現場が仕事しているので何かあったら対応することが必要とされます。で、妹にはこの’何かがあると’、休日でも携帯がなる。
こういうことはできないので、
アメリカでは予定通りに、工事が完了することはまずありません。
アメリカでさえこうですから、ヨーロッパなら最初から日本に比べると異様に長い工期を前提としてますし、途上国の場合工期に間に合わせる場合は、ほぼ確実に手抜きが行われます。
そして、中小企業に無理をさせることと、基本日本の場合国があまり大きくないだけでなく、関東東海関西に、産業圏の大部分が集中しているので、
今までずっと、
人海戦術でやり過ごしてきました。
で、その結果アメリカだけでなく、いわゆる今伸びている新興国に比べても、IT化が遅れていると言う状態になり、ここから
後進国、あるいはオワコン論が蔓延するわけです。
ただし、今の日本のいわゆる’貧しさ’は、別に日本に限った現象ではありません。基本いわゆる先進国全体で、格差がひろがり、
若年層の先行不安が爆発してます
いわば、元ニューアカ風に言うと、差異をもとめて世界中に広がった市場ベースの資本主義が地球全体をおおい、かって搾取の対象だった途上国がいわゆる先進国の労働市場をどんどん空洞化させ、その深化が、いま閾値を突破したということでしょう。
オワコンなのは、市場資本主義です。
2.輸出大国ではなかったと言う問題
これは、最近出てきた数字からすると非常に説得力のある命題です。高度成長期に一番貢献したのは実は、
内需だった。
ということですから。まあ、だからこそ日本モデルのイノベーションの中には、いわゆるガラパゴス化したものが多かったりするわけです。
その点、お隣の韓国こそが’輸出’に命をかけてますね。産業製品だけでなくK-Popとか韓流ドラマとか見てると、実に泥臭いまでに徹底してウケ狙いです。
ですから、サムソンはアップルの真似から初めてここまで来ましたし、あと家電は日本製品をもとに、どうやったらアメリカで受けるか研究し尽くして日本製品をほぼ追い出しましたから。
ただし、国内の経済は日本と逆にいくつかの財閥に牛耳られ、さらにその殆どが基本輸出産業なので、決定的に脆弱さを内包してます。
日本が後進国というひとは、
戦後円がここまで上がり、未だに対して下がっていない
と言う事実をいつも見落とす。
アベノミクスはいろいろな意味で最悪でしたが、一番バカげていたのは、円安を狙ったこと。
日本は輸出大国でない以上、基本的に
円高のほうが国民にとってありがたいのです。
GDPこそ随分前に抜かれてしまいますが、ことドル準備高は中国といまだに一位争い中です。それもこれも円が強いおかげです。そして、期間通貨であるドルをこれだけかかえこんでいられる日本の、その通貨が極端に下ることは世界同時恐慌にならない限りありえない。
もちろん、世界同時恐慌のくる未来は、正直ありえます。ただ私がいいたいのは、他国に比べてよりひどい状況になることはほぼありえません。Magnitude7以上の東京直下型地震ぐらいかな。最も日本の場合、Reset-Restartが得意な国民性なので(基本、世界一我慢強い)かえってそこから再生することもありますが。
それはともかく、私はアメリカに最初に来たので1,984年の暮でしたから、アメリカに言ってからも円が300円近くにまで下がったときも経験してます。ですから、韓国のように輸出に依存し、通貨の変化に振り回せる国に同情しますよ。
アメリカの場合、なんせ非情な資本主義の国ですから、やたらアウトソースを勧めた結果今やIT系とE-commerceと金融とBiotechぐらいしか残ってません。で、こういう産業はひとりひとりの生産性が極端に高い反面、いわゆる中流層を支えることのできる雇用を生み出すことができません。
一方、アメリカは移民の国なので少子化問題がない反面、逆に既得権益を享受していた白人元中流層の不満と不安が凄まじい。だからこそのTrumpでした。
一方日本は、いわば少子化のおかげで、そして島国だということもあり移民が人口動態をひっくり返すようなレベルに達することは当分ないでしょう。
ともかく、ここでも一番オワコンなのは、市場資本主義です。
さらに、ここに来て気候変動の結果威力が拡大しかつ多発するようになった自然災害が世界中のGDPを食い荒らす過程が始まってます。
そんなときに、自分たちの通貨が危機におちいる可能性を抱え込んでいるということは怖いことです。
日本はオワコンと言う方たちの殆どは、円建てで収入を得てます。こういう人たちは、一夜明けたら自国通貨が10分の一担ってしまったりする怖さがまるで分かってません。
今まで月100万あったりする収入が、一夜で10万になりさらに仕事先の多くが消滅してしまうということが実際に起こるのが、
通貨危機です。
だから、日本はオワコン、外国に行ったほうがいいという言説はこの上なく無責任で浅薄です。これに比べればフリーランスのすすめのほうがまだまし。だって適応性のある人は数がたとえ限られていても成功します。
ですから、後進国とか気軽にいうのは本当に浅薄だと思います。
3.日本の産業の強みはパクリ商品だった?
パクリだけだったら、いやここまで伸びません。それにアメリカとは全く違った形で今こそガラパゴス扱いされてますが、いろんなイノベーションは起きてます。
アメリカで一応MBAのとった身から見ると、日本の産業の最大の強みは、
品質管理、Quality Controlです
MBAの授業で日本の企業が登場するのは、例えばトヨタなどの、Just in Timeとか改善とか、看板方式とかですから。
これには工程の生産性を上げることも含まれます。こと工事や工場に関する限り日本は戦後世界のお手本になるような努力をしてきました。
だからこそ、一番最初はパクリ出会った製品でも、オリジナルより品質の良いものを作り出すという日本的現象が多々生まれたわけです。
しかも、日本は品質管理の工場とともに、いわゆるすり合わせの技術を磨き続けてきました。だから例えば自動車のようなすり合わせ部分の大きい製品ではいまだに競争力を保っています。
途上国で、以下に日本の中古車が愛されているかは、ちょっと唖然とするほどです。
それに対して’会社組織’の生産性のなさは、もう死んでほしいぐらいひどい。
それもこれも、基本
老害と忖度の蔓延です。
日本の支配層はこそはオワコンです。でも、それをいつまでものさばらせているのは、日本はオワコンといいながら政治を無視する若年層ということになりませんか?
イケハヤさんあたりはよく、日本の中央政府が過疎地域の面倒を見られなくなったら自分の国を作る的なことを言いますが、それよりやることあるでしょう。
さっさと、地方自治体を少単位から乗っ取りましょう。
ブロックチェーンの発達はこれからですが、仮想通貨に関しては私はあまり買いません。だって、何が悲しくてアメリカがドルの基幹通貨としての地位を手放すのですか?
ということは、円単位の経済をやめるというのは非現実的だということです。それよりも、下の方から若い人たちがどんどん地方自治体を乗っ取って行くほうが効率いいでしょう。ITでも、週休4日制でも、ロボットの活用でも、風力発電でも。
老害を駆逐することができれば、日本をポスト市場資本主義に適応した世界に作りなおせますよ。
ところで日本の強みを見た場合、これは世界市場で競争する場合プラスにもマイナスにもなりますが、もう一つの特徴は
Product Proliferation
日本て、産業に限らず文化面でもこれが強いのです。
もともとProliferationは生物学の言葉で繁殖です。が、Marketing用語としは、
Product proliferation occurs when organizations market many variations of the same products. まあ、もともとMarket シェアの獲得のためのはずだったのですが、この傾向は日本の場合もはや、
文化的遺伝子ですね。
Kitkatのバリエでも、
自販機の飲み物の種類の多さをみても、
コミケの巨大さを見ても
よくもまあというぐらい。これ多分中小企業の多さにも関係あるかもしれません。そういう分析はまだ読んだことがないけど。
で、大事なのは、人を引きつけるのはイノベーションだけではなく、この日本ではどこでも見られるProduct Proliferationであり得るということです。(ちなみに、変なKitkatは本当にハズレのない海外用土産です。)
まあ、Product Proliferationも、品質管理の派生と見られないこともない。
ともかく、いま大事なのは、日本がオワコンとか、後進国だとかの無責任な言説を垂れ流すことではなく、日本がいまオワコンである市場資本主義のさきをどう描くかだと思います。
正直、少子化と大廃業時代は、最大のチャンスだと思いますがね。
最後に、先進国の条件がらみで、もとの記事が何かと持ち上げる国々について一言。
中国の場合、一党独裁体制の国を今の社会では先進国と呼べません。そして韓国の場合ここにも書きましたが、産業構造がいびつでいつも通貨問題を内包してます。
更に東南アジアに関しては、ごく当たり前にまだ貧困層の基本的人権が踏みにじられています。幼児売春、臓器販売、麻薬そして犯罪率の高さと司法機関の腐敗。
まあ、最近流行りの上級国民とやらは、いかにの途上国ぽくなってきたということではありますが、なんせアメリカに住んでいるのでそれと比べると正直針小棒大だと思います。
ちなみに、アメリカの場合お金で解決しようという勢力はいつも存在します。一方でそれと対抗する草の根民主主義も未だに健在。逆にTrumpのせいで盛り上がってます。
アメリカが、かって共産主義より資本家にきついFDR(フランクリン ルーズベルト)を4期も大統領に選んだ国であることをお忘れなく。
最後ちょっとずれましたが、皆さんやれることたくさんありますので、変な言説に惑わされないでください。