そもそも、昭和の少女漫画で、Happy Endという夢によって救われるのは主人公の女の子です。

その中で、予定調和の極み、ハーレクインが登場するまえから女の子の妄想を愛らしい絵柄でくるみ、精神的ポルノグラフィーとして機能していた作品群を

乙女チックロマン

と呼んでました。

始まりは陸奥A子さんと私は思ってますが、

で、この世界観のKey Wordは、

‘そのままの君が好きだよ’

です。

どじで、恥ずかしがり屋で、なんのとりえもないけど何故か主人公は素敵な男の子に見出されてHappy Endにラクラクとたどり着くのです。

基本的に何もせずに。

 

その点、平成の少女漫画の主人公たちは、私思うのですがすごく、いろいろ頑張ったり、打ち込んでいることがあったり、挙句の果てに世界を救うために戦ったりと忙しい。

 

それはそれですごく気持ちがいいし面白いのですが、

一方理不尽な恋愛感情とか、都合のいい妄想をそのまま満たしてくれるラブストーリーとかは成立しにくくなりました。

 

で、再三繰り返しているように、恋愛漫画の主流はBLに移っちゃったわけです。

だったら、かって少女漫画に存在していた、乙女チックロマンのBL版があってもおかしくない。

 

さて、逆と言いました。私達がこの漫画を読む時あまり深く考えずに、このすごくいいやつ翔真君目線で話を追ってしまいますよね。

 

で、まあめでたく芦田くんと結ばれて良かったね。で、済むはずだったのですが何かがひっかかっていたのです。

で考えてみると、芦田くんて、まあ背が高い、もてるゲイのイケメンみたいですが、それいがい基本

 

クズじゃないですか?

 

私達は、そもそも翔真君目線で、芦田くんを見ているから、なんとなく芦田くんを根拠なく好意てきにみてしまってません?

 

実はこの話、振り返ってみるとすべての行動は翔真君が最初に動いているのです。

 

だから、この話は自己嫌悪ビッチゲイのイケメンが、すごくいいやつで、可愛い’ノンケ’の男の子に、

’そのままの君が好きだよ’といってもらうお話と取ることができます。

 

そういうふうに視点を変えると、このこますごく意味深でしょう。

’言ってくれただろう俺に’

’男も女もみんな同じ人間だって’

’じゃあ僕も芦田を望んだっておかしくないじゃんか’

 

ここで、翔真くんはまあ、自分の性的曖昧さをそのまま宣言してます。

 

まあ、あんまりバイだの、ゲイだの、ノンケだのいいたくないからそれはいいんです。

 

ただ、振り返ってみると、そもそも翔真くん最初から芦田くんのこと、結構気にしてませんか?確かにいいやつだからというのもありますが、

 

明らかに惹かれてますよ。

 

大体、ぼろぼろの芦田くんを拾って、最初に翔真くんが芦田くんに気づいたのですから。

 

基本的に翔真くんタイプって、他人を、いや他者をありのまま受け入れてしまうのうりょくがあります。

ということは、逆に自分の恋心にはなかなか気づきにくいものなのです。

で、こういう人が自分の恋心に気付くのは本来、性愛衝動感じたときです。

 

もちろん、BLの場合、性愛抜きの恋愛はありえないので、基本ここが描きやすい。

 

翔真くんは学生時代から芦田くんをありのままに受け入れてしまいました。

 

だから、芦田くんが最初の夜、翔真くんを使ってしまった時、翔真くんは初めて自分が芦田くんに対して性的関心があることに気がついたわけです。

 

さて、ではリバ行為は何だったのか。これは逆に、

 

翔真くんが、芦田くんを好きだという宣言です。

 

これは、BLですから恋心としたい心のあいだに隙間など全くありません。

 

逆に、翔真くんからまずはっきり告白した後、芦田くんは逃げ腰になります。

 

そして、その後芦田くんが彼自身どうしたいかをはっきりさせるまで、翔真くんは芦田くんとの肉体関係を拒みます。

 

でも、翔真くんの気持ち、芦田くんへの愛情には、

全くブレがありません。

このあたりから、正直翔真くんは本当に、人間離れしてきます。

天使です。

で、またまた芦田くんは何もせずに、翔真くんは芦田くんの戸惑いや混乱を受け入れ愛をささやくのです。

 

’そっか’

’芦田は俺とくっついた後が怖かったのか’

そりゃ、怖いですよ。

だって翔真くんは理想化されてますから。

ここまで自己防衛しないで平気な人間はまずいません。

 

とはいえ、芦田くんはこの天使にもちろん抵抗できず、素直に幸せになるという落ちですが。

 

まあ、翔真くんはとにかく魅力的に描かれているので、それはそれでいいのですが、これよく考えると、どうしようもない恋ではなく、ありえない恋のお話だったと、私のように少女漫画を何十年も読んできた人間は、覚めて分析してしまうのでした。

 

 

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