‘江戸アルキ帳’ 杉浦日向子、この本はしんみりしたいときに手にとってめくる。

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さすがに、選挙絡みの政治の話が続いて、息切れしてきました。

とはいえ、なんと諦めたはずのFlorida州で、差が縮まりすぎてAutomatic Recountが始まります。

確かに今現在の差は0.25%を切ったので、それはもう誤差の範囲ですね。で、この数字ですと、Hand Countという大変なことになります。

しかも、知事選と、上院選挙両方をRecountという異常事態。ただ、今回は大統領選挙ではないので、途中ではしおって決めるなんてことにはならないと思います。民主党側は、かってGoreのRecountを無理やりやめさせられた過去がありますから、今度はだまっていないでしょう。

さて、何かこう和む話題というか、まあ私のブログですから本の話ですよね。

杉浦日向子さん知ってますか。

もともとは漫画家としてデビューして、その後なんというか江戸ライフスタイル案内人見たいな感じのエッセイをずいぶんと書いてくださいました。

バブルが弾けたあとの90年代の日本での、いわゆる江戸ブームに連なる物書きの一人として思い出す方がいればそれもよいのです。

かく言う私も、ふと江戸が気になってあのころ、いつもながらのNew York の紀伊国屋で文庫版を手にとったのが出会いでしたから。

なんだかんだと、数えたら全部で8冊ありました。うち2冊は漫画。

そしてここでとりあげた一冊で2倍楽しめる不思議な文庫本がこれです。

この本完全にロングセラーです。平成元年に出版されて、わたしが 購入した平成13年には、すでに17刷ですから。

今も相変わらず新潮文庫で普通に手に入るなんてとても嬉しい。

この本は、サンデー毎日に昭和の終わりに3年近くにわたって連載された、いわば絵付きエッセイをまとめたものです。

ですから見開き2ぺーじで、一話完結。

とぼけたSF風の大前提があり、筆者は毎週末江戸へTimeTravelしては、スケッチを帰ってから書いているのだと。

浮世絵で見たことのあるような絵柄が、確かにスケッチとして描かれています。

一話ごとのタイトルは、TimeTravel先の地名と、現地時間。

例えばこの写真のページのタイトルは、

天保4年 11月24日、<曇りのち晴れ> 谷中切通し

江戸時代、上野から根津にぬけるみちは、上野のお山の切通し道だった。ただそれだけの絵なのですが。

ともかく、ああこれが昔の姿、お江戸の頃はこんなふうだったのかと、その日常感覚としてあった風景が、蘇るのです。

そしてその時なんとも言えない懐かしさを覚えて

癒やされます。

もちろん、江戸時代ですから、平均寿命はずっと短いし、不条理はやまほどあり、現代に比べるのはちょっと無理なほど、何一つとして私達が当たり前のように馴染んでいる便利な生活からは程遠い世界でした。

ただ、同時代の世界に比べて、特に年に住んでいた普通の市民がそれなりに暮らしを楽しんでいたのも事実です。

たとえば、江戸の文盲率は世界最低。なんせ、普通の市民が貧乏ながらも娯楽を楽しめたのも事実。そしてなにより、怠け者も多かった。でも、それでどうにかやっていけたのも江戸のよさでしたから。

日本人が、趣味さえあれば、それなりに結構楽しくやっていけるという生活信条みたいなものを持つに至ったのも、やはり江戸時代がルーツだと思います。

あともうひとつ、私は昭和の東京育ちですから、まだ少し江戸にまで繋がりそうな風景を、うっすらと覚えてもいます。

もちろん、今と同じ地名もたくさんありますので、そこから過去にさかのぼる心の旅が、きもちよくもあります。

そうか、これこそ本を使った、

トリップ体験だったのですね。

やたらと世知辛い世の中になっていますので、そこからちょっと隠れてリラックスしたい時にほんとにおすすめなのです。

ところで、杉浦さんはずいぶんと早死なさっています。

他の本もまた取り上げますね。