今でこそ、写真はほぼすべてカラーで、いわゆるプロが取るカラー写真もイメージとしての洗練が高いわけです。

ただ、プロが見せてくれる写真は、もはや現実をリアルに切り取ったものというよりは、まるで画家のように、かなり写真家の意図のもとに構築されたイメージであるわけです。

翻って、戦時中の日本の場合、写真は白黒で、たとえ公共機関といえどもあまりカラーフィルムを使えませんでした。まあ、太平洋戦争が始まってからの日本はリソースの貧困化が著しかったわけですし。一方アメリカといえば、一般家庭でお手軽にカラー写真を撮り始めたのはさすがに50年代末ぐらいからですが、軍用となると潤沢な予算もあり、いろいろな局面でカラーで第二次世界大戦中の記録が残しています。原爆写真すらカラーでの記録があります。

さて、今日は広島に原爆が落とされた、原爆記念日

ここ最近感じるのは、むしろ若い世代のほうが、テクノロジーを使って原爆の記憶を未来に繋ぐことにエネルギーを注いでいる感じがします。最近毎朝欠かさず見ているモニフラでは、今朝今朝、記憶の解答という広島平和公園を歩きながら、当時の写真を見れるアプリの開発をしている広島出身、まだ19歳バリバリZ世代の庭田さんが登場。これARアプリです。すごい。

で、白黒で取られた写真に色を付けるというプロジェクトは、結構多くて、例えば開国直後にとられた白黒写真に色を付けたものを見ると、昔のよりリアルになった情景を見ることができます。

それはそれですばらしいし、このARアプリは、純粋にARの応用例としてももっと広がっていいと思います。例えば実家から近いこともあって私が好きな美術館の一つ江戸東京博物館とか、ARを取り入れるといいよね。それもカラーの。

でもそこでふと考えて、たとえばホロコースト博物館や、グラウンドゼロのアウシュビッツ収容所跡にARやVRを取り入れたらと思いついたのですが、それは絶対

トラウマものでしょう

 

私は、まだ小学生の低学年だった時に、アランルネのドキュメンタリーの傑作‘夜と霧‘をさすがに見たわけはないのですが、なぜかあの映画のチラシが新聞に挟まっていてそれを見ました。これトラウマ的原体験の一部になりました。

あれ、カラーですらなかったのに。

そして、日本人ですから、広島や長崎原爆関係の写真やFootageはそれなりに見てきましたが、それでも1985年アメリカで見たそれらの写真やフィルムFootageは、まったく違うレベルの衝撃でした。

なぜなら、それはカラーだったから

 

日本側は原爆被災者に関してカラー写真を撮っていません。転倒していますが、だからこそカラーアニメ`裸足のゲン‘が基本あまりにグロいという印象になってしまったわけです。

私たちはいつの間にか、白黒のイメージというフィルターのもとで原爆のリアルを眺めているつもりになっていました。

で、1985年何があったかというと、この年は広島原爆のあった1945年から40年たち、それまで封印されていた原爆関係記録のアーカイブが解放されたのです。

そして、その戦後ずっと封印されていたイメージが、アメリカの主に寄付だけで賄っているPBS (Public Broadcasting Service )の原爆40週年特番(確かすごく長かったのです2時間以上だった気がします。)で、大々的に放映されたのです。

私はこれを見ました。

 

なんというか、邦題が‘24時間の情事` (ヌーベルバーグの傑作、これもアランレネ、Hiroshima mon amour、ちなみにあの頃のフランス映画は今見ると本当に新鮮です。Netflixで何を見るか迷っているあなたにもお勧めです。ヌーベルバーグで、検索をかけて作品名をしらべるといいですよ。)で耳に残ってしまったフレーズ、

Tu n’as rien vu à Hiroshima(あなたは広島で何も見なかった)

 

これを受けた感じになりました。あ、この映画難解である者の、なんというか何かがすごく残るのです。アランルネでは‘去年マリエンバード‘出が大好きです。途中で眠りそうにもなりますが、ほとんど忘れてしまうボン百の映画と違い、やはり何かを見させられてしまう。あ、女優さんが恐ろしくきれいでした。

ちなみに、Googleをかけて、やっと出てきた、あの時見たものを思い起こさせてくれるカラー写真は、やっと一つ見つかりました。それでも、ダウンロードして、編集してフィルターをかけるとういういつものステップが苦痛でした。

あの時、TVで延々とこのレベルの生々しいカラー写真や、フィルムFootageを見たのです。

結局私は、小学生低学年の時にホロコーストのイメージを見て以来、見たくないものから目を背けるのはやめようとしたのではと思います。

見るということはとても罪深いことでもあります。だって、見て何もしなかったということでもありますから。

だからこそ、確かに見なくてはいけない。

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