’天気の子’’アメリカ公開、家族と見に行ってきました。アメリカの観客はかなり真剣に見入っていました。私は’君の名は’よりずっと好きです。

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ずいぶんと、見ているだけで引き込まれてしまうことが多かった。

そんな映像を見たのはなんだか久しぶりだった気がする。

’君の名は’を見たときは、きれいだなあ、よくできた話だなあ、そして最後に’本当によかった’とうれし涙がどっと出た感じだった。

でも’天気の子’で涙ぐむのは、とても

辛かった

感動といってしまうのには、あまりに辛い。

***

日本は結構すごい国だ。

宮崎みたいな天才を生みながら、こんな本当に全く異質な才能を生み出してしまうのだから。

私はどうして、’君の名は’より、’天気の子’に惹かれたのだろう。

’君の名は’はとても、才気あふれる作品で、当たり前の子供たちに訪れた特別な時間について語る。そんな風に受け止めた。

異世界も、隕石の落下がなくとも、初めての恋で人は誰だって中二病を患う。

でも、’天気の子’の舞台は、もはや逃れようのない地球温暖化の未来への道どりをたどるさなかで、ただどれほどの破局と生きていくのかだけは曖昧なままの私たちの現実の、そのまんまの延長線上の可能性。

16歳の家出少年なんて、とにかく悲惨だ。でも、この少年ずいぶんと素敵な名前の持ち主だよね。森嶋帆高、Hodakaっていうんだよね。

君があった特別な少女の名前は、天野陽菜、Hinaさんていうんだ。

アメリカ人のレビューを読んでいて、結構Hinaさんのキャラが浅いだの、説明不足だのまるで難癖みたいな言いがかりが時々目についた。

いえいえ、この物語は、語り手がHodaka少年であるだけでなく、18歳と偽り続けたHinaさんは、ほんとうは

年下で15歳だった

それでもう、私には十分わかる。

行く場がなく、やっとの思いでラブホテルにたどり着いた、HodakaとHinaとHina の弟の凪の三人は、こんな場所で、ただ結構見慣れたインスタント食品と、大きなバスタブにはしゃぎ喜ぶ。

つくづく、

Hodakaは16歳で、

凪は小学生で、

そしてHinaさん本当は15歳だったんだ。

そうだ、新海誠の情景描写は本当に豊かだ。

結局、三年後ですら、Hodakaは大学生で、Hinaさんは高校生。

まだ大人ですらない。

子供たちも、大人も泣いてばかりいるから、雨やまなくなってしまったのだろうか。

それにしても、雨が美しい。

本当にうっとうしいのだけど、美しい。

東京タワーの位置と、スカイツリーの見え具合で、東京のどこらへんを彷徨しているかが、うかがわれるのも私には懐かしい。

真夏の雪は、容赦なく人を凍てつかせるけど、それとは無関係に雪降る東京の夜は、本当に

懐かしい夢のように美しい。

そして沈んでしまった東京も、相変わらず美しい。

あなたが大人で、Hodakaの選択に異議を唱えるのは勝手だと思う。でも、子供は大人の犠牲になるために生まれてきたわけじゃない。

子供は、たぶんあなたよりほんのちょっとましな大人になりたいと思って、たぶんもがいているよ。

私は、子供のころこうはなりたくないと思っていた大人にならなくてすんでいるだろうか。

私が、17歳の時、早生まれだったのでもう高三だったけど、どうしようもなく息が詰まるようになった。

そして、私はMelodyという、中学生の男の子と女の子が駆け落ちする映画を見て、

家出したっけ

だから私は、少しだけだけれどHodakaの気持ちは分かる。

ずーっと優等生で、でも自己評価も低くしろというわけのわからない抑圧に苦しめられ続けてきたから、むしろ世界の犠牲になって消えるのが正しい。そんなHinaさんの感じ方もまだ少し覚えている。

初めての恋をする子供たちは、まるで因幡の白兎みたい。空気が触れるだけで痛むようなあかむけの心を抱え込んでいる。

ああそうか、だからこそ

溺れていく東京は、もうあんなにも美しかったんだ。

そういえば、上映中の映画館は、限られたコミックリリーフを除いて、本当に静まり返っていた。照明がついた後も、なんだかみな不安そうにしていた。

また、何度か見たいと今は思う。

何度も、何度も見たいと思う。