死んでも空気は読みたくない!! ’着たい服がある’ 常喜寝太郎、 着るものを変えたら、眼の前の景色が一気に広がるかもしれません。

シェアする

そういえば、昔々橋本治ファンクラブという、非公認のグループがあり、そこで私は橋本さんに皆のきせかえをやらされてましたっけ。

橋本さんの意図は、ざっくりいうと、’その人が隠しているそうありたい自分’を見つけてあげてということでしたが。

例えば欧米に比べて、日本というのはとにかく幼い頃から周りと仲良くやっていくことが強調されます。その反対に一人一人が自分なりの意見をもち、それを表現すると言ったような訓練はほとんどなされていない感じがします。

ヨーロッパも同じらしいと聞きはしましたが、私が住んでいるアメリカの場合、職業的要請がないかぎり、日本に比べると、本当に

普段着のドウデモイイ感がすごい。

で、その割には晴れのイベントということになると、結構気合が入って、普段が同しようもない割には結構様になっている人が多くちょっと不思議です。

それに比べて、日本は本当に皆服装がこう、小奇麗なのです。大体昔ほど大きな流行はなくなったとはいえ、欧米に比べるとずっとファッションに対する目配りが半端ない。

でも、その割に一部の若い人たちを除いて決して楽しそうでもない。つまり、

きちんとして見える。らしく見える。周りから浮かない。

というのが、毎日の服選びの基本なのですね。

そんな日本の現実の真っ只中で、この漫画は大学を卒業したばかりの女性が、実は大柄で大人っぽい顔立ちの自分から一番かけ離れた、

ロリータ・ファッションを着たい。

そういう話なのです。

たかが、服の話というなかれ、もうLGBTカミングアウト顔負けの、家族や知り合いのきつい反応に直面することになります。

で、この漫画主人公が女性で、扉絵がロリータ・ファッションだったりするにもかかわらず、男性作者であるだけでなく、掲載誌も

青年誌です。

主人公のマミは、思い切って憧れのロリータファッションを手に入れたものの、それを外に来ていく勇気がでない。

背が高く、バイト先では女性客にむしろハンサム・ウーマンとして憧れを集めていたりするのですが、そういう外見とマミが本当に着たい服のイメージは全くちぐはぐ。

そんな時、バイト先に新人の小澤くんがやってくるのです。彼もかなりのイケメンでまた注目を集めたのですが、それは第一日目にしてぶち壊されます。

なぜなら小澤くんの私服というのは

超トンガリ系

周りじゅうの目を点に替える中、マミだけはひとり自分にもあの勇気があればと悶々。

女の子たちの陰口を聞いた店長が、さすがの奇抜さに疑問をなげかけると、小澤くんは、

’でもまあ、自分の着たい服着るほうが一億倍気持ちいいんスよ’

と一蹴。

自分に一番馴染む服、自分がこうでありたいと思わせてくれる服。

そんなふうに服を媒介として、お話は、家族の繋がりよう、友達の濃さ薄さ、そして有りたい自分と、誰かさんに好きになってもらいたい自分のギャップなどの、服絡みの表層の重さみたいなテーマを突き詰めていくのです。

とくに、マミと離婚した両親それぞれとの関係性の’アップデート’は、本当に涙なしには読めないのです。まあ、マミなんだかんだ言ってもいい子なのです。優しいし。

でも、優しいから、ついつい同調圧力に押し殺されかねない。

マミが選んだ職業が小学校の先生ということもあり、お話が更に広がっていく可能性がすでに見えています。

さて、ここではっきりしておきたいのは、ここに登場する2つの極端なファッション。ロリータそして超とんがり系。

この2つは、おじさんの世界に存在してはならない表層です。

まあ、私改めて言わなくとも、おばさんより、婆さんという年齢ですが、いまだロリータ・ファッション好きですよ。

ロリータ・ファッションほど、物語性が強くはなかったのですが、私がまだ20代だったころ、とにかく一番好きだったデザイナーズブランドが、

原宿Milk

たまーに、撮影でお借りしたりする行きがかりで、ショー用の服を安く購入したりしておりました。ロリータ・ファッションほど徹底してはいないけど、ロリータテイストの、甘い服。あれが本当に好きでしたし。

そしてロリータといえば、この小説。映画にもなり、主人公二人が頑張ってくれたおかげでとても楽しい映画でした。

この映画と、ケラのせいで欧米でも、コン経由でロリータファッションが一つのカルトファンションとしてフォロワーを増やしていきましたから。ただ、海外の場合はかなりコスプレに限りなく近い感じですが。

それに比べて、日本のロリータたちは頑張ってますよね。

ロリータって、男を完全に無視した、ある種の幼女単性成熟形態みたいなものですから、おじさんから見ると、ロリコン趣味ですらはねつけます。

前々から来てみたかったけど、諦めていた服なんてものがあったら、ぜひ来てみてください。それは子供の特権です。

自分に子供ができてしまうと、さすが子供が大人になってくれるまでは、正直自粛ですね。

でも、子供が大人になって、またひとりになったらたとえBobがどんな嫌な顔を仕様とも、まだやってみたい格好ありますよ。

大人っぽいゴスとか、絶対そのひとつ。髪の毛が全部白髪になったら、また色々やりようがありそうだし。

いつは忙しさに紛れて、どうしてもどうでもいい格好をしがちだけど、せめて着ていて気分が上がる服を着続けたいですよね。