リーマンショックを予言した ’金融ブロガー’の思い出

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正直なところ、今の日本で読んでみたいような気を起こさせる、投資経済関係のライター思いつきません。

私にとって、ただ一人日本人でありながら、国際金融の実際と、日本の特殊性をわきまえて強く、かつ正確なメッセージを書き続けた人は、去年の10月に、思いがけなく逝ってしまいました。

去年、この記事を見つけたときはショックでした。

ぐっちーさんは「リーマンショック」を予言した

という記事が目にはいり、しかも書き手はかんべえさん。かんべえさんて、確かぐっちーさんと中のいいエコノミストでしょ。

で、開けてびっくり、

ぐっちーさんが9月24日に逝去、死因は食道がん

ともあれ、私がグッチーさんのことを知ったのは、やはりリーマンショック絡みです。

私の場合、リーマンショックの一つの要因であるアメリカの不動産バブルを小スケールですが、直に経験しています。一番最後にいわゆるフリップ(古い家を改造して高く売って儲けをだす。)したのが2007年の夏。予定では夏の前半に終わるはずだった改装が結局秋のはじめまでかかり、結局3度値下げをしたあとで、2008年5月に売り逃げ。丁度不動産屋に払うコミッション分だけロスが出ました。

それでも、この数カ月後の大暴落が始まり、同じような物件が私の売値の半分以下になりましたから。

というわけで、今まで取り上げたBig Shortを始めとして、この経済カタストロフィに関する本は読み漁りました。

ちなみにBig Shortの邦訳は、文庫にもなりましたのでお金に興味のある方は必ず読みましょう。ハリウッドでも映画化されてますし。あ、映画のタイトルはなぜか’マネー・ショート’完全に意味不明のタイトルです。(私は英語で原作を読み、ブルンバーグのTVドキュメンタリーもみて、さらに映画をみて、DVDも買いました。現在の金融市場の怖さをここまで事細かに浮き彫りにした本、しかも世界規模の金融市場崩壊について解説した本ですよ。絶対読みましょう。)

で、日本語でGoogleをかけたときに、真っ先に出てきたのが彼の旧ブログだったのです。とにかく完全同時進行で書かれていた彼の2007年からのアーカイブされた記事を読みあさりましたね。

この東洋経済オンラインの記事にあるように、彼一人が誰より早い時期でリーマンショックを予想していたので、その後しばらく彼の本が矢継ぎ早にに出され、私も2冊買いました。

ぐっちーさんは、1960年の東京港区の生まれで慶応大学経済学部卒で、丸紅からスタート、でも1986年からは、モーガンスタンレーを始めとして欧米の金融機関の一線でずーっとやってきてますから、ここが普通の日本人エリートとかなり違う。

正直なところ、数学を諦めた時最初は私自身Wall Streetに行こうかと思っていたくらいですから、この感覚ある程度わかります。(実際、私の知り合いは元カレ含め数人Wall St.に行った人たち良く知ってますし。)

東洋経済オンラインの彼の連載は、最長なものの一つですが私がこのポータルをチェックするようになってからの彼の記事に対するコメントは、

信じられないぐらいNegative

そのたぶん一つの理由は、彼の文章はかなり軽い。

さらに、彼の記事の一番最後のページは、競馬予想なのです。でも、投資に深く関わる人間は、ギャンブルが極端に嫌いか、(私の用に理科系のタイプ、数学や統計がすき。)逆に、根っからギャンブル好きで、逆にお気楽なギャンブルをやることによって、本業で冷静さを失わないようにしているタイプ。

私の父も、根っからギャンブルが好きで、一方中小企業のオーナー社長としてはいたって健全かつ計算されつくしたリスクを取るたちだったので、かなり親近感をもってしまうキャラタイプなのです。

さらに、グッチーさんって、やはり生粋の都会っ子だと思います。

ほら、競馬っていわゆる一流企業社員タイプが大声で趣味にかかげるものではないでしょう。でも、根っからの都会っ子て、逆にラシクしすぎるのってだせーとか恥じるものでしょう。

でも、こういうのってもう若い人には伝わらないでしょうね。

が、一方で彼は26歳から外資の金融の世界でずーっとやってきてますから、国内にいる同年代に比べて経験の濃さがまるで桁違いです。

経験が濃いということは、生き抜くために常に学習を怠らず本物の情報収集を欠かさないと言うことであります。

はっきり言ってしまうと、

グッチーさんは大変頭の回転が早い方で、洞察力が鋭い人でした。

学歴は立派(といっても基本4年制大学卒)でも、それ以降何一つ勉強してきていない、そしてアメリカでアメリカ人ときちんとしたコミュニケーションがまるでできていない、私はそういう日本の企業人をあまりに多く眺めてますので、グッチーさんが以下に違うレベルかよく分かるのです。

英語力ひとつとっても、本当に外国にいる日本人の特に男はまるでだめ。

たとえば、最近の話一つとっても分かるじゃないですか。小泉環境大臣のFaux pasですよ。環境会議で、’ステーキ’食べるのが楽しみなんて言うバカいるか?というか、そういうことをきっちり予めフォローできる日本人スタッフが、いないということでしょう。

私は、グッチーさんの視点にすべて賛成するわけではありませんが、すくなくとも彼の’アメリカの現在寸評’のような軽い内容の場合、非常にうなずくことが多い。

それは、たまに登場する他の外国在住ライターさんたちより、ずっとバランスよく全体を今を見ていると同感できるのです。

あと、これは頭の回転の早い人に多いのですが、グッチーさんはあまり専門用語やら、難しい言葉を使わない。それでころか柄が悪いと言われることが多くて笑う。

(そういえば、私の父も職業柄がらっぱちの職人さんたちときちんと付き合っている人間でしたので、かなり背景を疑われてました。実際には一橋を卒業して丸紅にいき、ここを2年経たずしてやめて起業しただけですが。)

ちなみに、グッチーさんの新しい方のブログは、3-11の後、だんだん読まなくなってしまいました。彼の焦点が地方再生に移り、私が読みたいタイプの内容がほとんど掲載されなくなったので。

でも、結局グッチーさんいじょうに、世界経済動向みたいなことについて話をきいてみたいような鋭さを感じさせるブロガーにはいまのところ出会っていません。

地方再生ということについても、それこそ大廃業時代を控えて、色々分析してほしかった。

はっきりいいましょう。

こと世界金融に関する限り、日本国内の言説はあまりに無知。

さらに、日本全体が投資と金融について無知すぎる。

だからこそ、この連載を始めたのです。やはりこの先は英語がらみで書くしかないのかもしれません。

ところで、彼の本ですが、大体3/2ぐらいはとても軽く読めて分かりやすいのです。ただし残りは結構難しくて歯ごたえあります。

一体に、株式市場に比べて、債券市場そしてCDO(collateralized debt obligation債務担保証券)の仕組みは難しいです。Durationとか、Yieldカーブの読み方、値動きとRateの関係とか、最初とっつきにくいので。

ですからまあ、いい勉強になりますが。

試しに、今回取り上げた本を手に取ってみてくれませんでしょうか。何かに気づくきっかけになるかもしれませんので。